
賃貸の成約の約9割は、入居希望者が直接ポータルサイトを見て問い合わせるのではなく、仲介業者がATBBやレインズといった業者間サイトで物件を探し、顧客に紹介するルートから生まれます。
空室が埋まらない原因の多くは、物件そのものではなく「仲介業者に紹介されていない」という募集活動の問題です。リフォームや設備投資の前に、業者間サイトへの掲載状況・ADの設定・ポータルサイトの物件情報を見直すのが先決です。
この記事では、アソークが管理現場で把握している入居付けの仕組みと、空室解消に直結する実務手順を解説します。「物件のスペック自体を改善したい」「内見は来るが決まらない」という場合は、空室対策の観点から別記事で解説しています。
目次
入居者募集の9割を決める業者間サイトと客付けの仕組み

仲介業者が物件を探す業者間サイトへの対応が、入居者募集の最重要課題です。
入居者が物件を見つけるルートの実態
入居者が物件を見つける流れは、一般的なオーナーが想像するよりも間接的です。入居希望者はSUUMOやHOME'Sで物件を探すこともありますが、実際に成約に至るケースの多くは「仲介会社のスタッフが業者間サイトで物件を探し、顧客に紹介する」というルートを経ています。
つまり、物件情報の最初の受け手は入居希望者ではなく、仲介会社のスタッフです。仲介スタッフがATBBやレインズで物件を検索し、条件に合う物件を絞り込み、顧客に提案する。このルートを通らなければ、どれだけポータルサイトに掲載していても内見には繋がりません。
成約の90%ぐらいは業者間サイト経由(アソーク管理現場データ)
自主管理オーナーが自分で入居者募集を行う場合の手順や注意点は、以下の記事でまとめています。
ATBB・レインズへの掲載状況が成約率を左右する
ATBBとレインズは、不動産仲介会社が物件情報を共有するためのプラットフォームです。ATBBはアットホームが運営する業者間流通サイト、レインズは国土交通省が指定する不動産流通機構が運営するシステムで、会員の不動産会社しかアクセスできません。
管理会社がATBBやレインズに物件情報を登録していない、または情報が古いまま放置されている場合、仲介会社のスタッフはその物件の存在を知ることができません。全国平均の空室期間のデータと比較して、自分の物件が長期化しているなら、まず業者間サイトの掲載状況を確認することが必要です。
掲載状況の確認ポイントは3つです。
- 登録されているか(未登録の場合、仲介業者はその物件を知らない)
- 情報の鮮度(更新日が古い物件はシステム上で後回しにされる)
- 写真の有無・枚数(写真なし・少ない物件は仲介スタッフに敬遠される)
アソークでは管理物件をSUUMO・HOME'S・レインズ・ATBBに掲載し、プロカメラマンによる撮影で物件の情報を最大化しています。
管理会社が「囲い込み」をしていないか確認すべき理由
囲い込みとは、管理会社が自社の仲介部門で成約させるために、他の仲介会社からの問い合わせを断ったり、業者間サイトへの掲載を制限したりする慣行です。この状態では、物件情報が流通する仲介会社の数が激減し、空室が長期化します。
確認方法は簡単です。管理会社に「業者間サイトへの掲載状況を見せてください」と伝えてください。掲載履歴や更新状況をすぐに提示できない管理会社は、対応に問題がある可能性が高いといえます。囲い込みが疑われる場合や管理会社の対応に不満がある場合は、変更を検討すべき段階です。
管理会社の変更手順・費用・選び方入居者が決まらない募集活動の失敗パターン

募集活動の失敗には、業界の実務を知らないと気づけない共通パターンがあります。
物件情報の鮮度と写真クオリティが内見数を決める
仲介会社のスタッフが業者間サイトで物件を検索するとき、更新日が古い物件や写真が少ない物件は優先度が下がります。理由は単純で、スタッフも顧客に提案しやすい物件を選ぶからです。見栄えの悪い物件を紹介しても反応が得られず、自分の業務効率が下がります。
写真については、枚数と明るさが最低限の基準です。室内写真10枚以上・自然光または照明を活用した明るい写真が目安となります。また、間取り図の寸法記載はオンラインでの物件選定が主流になった今、特に重要です。
詳細な間取り図を用意したことで、遠方からの引っ越しで時間がない入居希望者から複数の未内見契約が入った(アソーク管理現場データ)
アソークでは全管理物件にプロカメラマンによる撮影と寸法入り間取り図を提供し、100%スタッフ対応で物件情報の品質を維持しています。
家賃設定の「1,000円の罠」——ポータルフィルターへの対応
ポータルサイトには家賃の検索フィルターがあり、多くのユーザーが「〜6万円」「〜8万円」といった上限を設定して検索します。このとき、6万1,000円の物件は「〜6万円」の検索結果に表示されません。一方、5万9,000円の物件は表示されます。わずか2,000円の差が、検索でヒットするかどうかを決めます。
フィルター境界となる金額(6万・7万・8万・10万・12万・15万円)のすぐ上に設定されている家賃は、検索から外れやすい位置にあります。現行の家賃がフィルター境界の直上にある場合、わずかな値下げで検索結果に表示される件数が大幅に増えることがあります。家賃5,000円の調整で年間6万円の収益減になりますが、空室1ヶ月分の損失と比較して判断してください。
適切な家賃設定の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
仲介業者に選ばれない物件の共通点(AD・礼金・条件設定)
仲介会社のスタッフが複数の類似物件を抱えているとき、どの物件を顧客に優先して紹介するかは、ADの有無と金額が大きく影響します。ADとは仲介業者に支払う入居促進費で、ADが設定されている物件を紹介すれば仲介会社にとっての収益になります。
礼金が高く設定されている物件も、入居者の初期費用が高くなるため成約しにくい傾向があります。同条件の物件が複数ある場合、礼金0の物件を仲介スタッフが優先紹介するのは自然な流れです。
集客がうまくいかない原因が管理会社の体制にある場合は、管理会社の変更という選択肢も有効です。
客付けを加速させる広告費(AD)の設定方法

ADの有無は、仲介会社が物件を紹介するかどうかに直結します。
ADとは何か——賃貸業界での仕組みと相場
ADとは「Advertisement(広告)」の略で、賃貸業界では管理会社または物件オーナーが仲介会社に支払う入居促進費を指します。仲介業者は入居者から仲介手数料(家賃1ヶ月分)を受け取るのが一般的ですが、AD付き物件では追加で管理会社またはオーナーから報酬を受け取れます。
ADの相場は家賃0.5〜2ヶ月分(詳細は下記参照)で、競争が激しいエリアや空室期間が長い物件では2〜3ヶ月分以上に設定されることもあります。ADを設定することで「仲介会社が積極的に紹介したい物件」になり、内見数が増えます。
ADの有無で閲覧数が3倍以上変わることも珍しくない(アソーク管理現場データ)
ADの相場・設定方法・どのタイミングで上げるべきかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
200件中158件にAD設定——競合物件の実態
ADの設定は特殊な施策ではなく、競合物件の標準対応です。アソークが実際に業者間サイトで特定エリアの募集物件を調査したところ、200件中158件(約79%)にADが設定されていました。
あるエリアの業者間サイト検索で、200件中158件に広告費が設定されていた(アソーク管理現場データ)
逆に言えば、AD未設定の物件は上位22%の競争をしていることになります。競合の8割がADを設定している市場で、AD未設定のまま「なぜ内見が来ないのか」と悩むのは、構造的な問題を見落としています。「うちの物件にはADが必要ない」と判断する前に、同エリアの競合物件のAD設定状況を確認することが先決です。
AD設定額の判断基準と変更タイミング
ADの適正額は「内見週1件」を目安に判断できます。内見が週1件以上入っている状態であれば、おおむね仲介会社に認知されている状態です。週1件以上の内見がある物件は1ヶ月以内に成約するケースが多く、週3件程度になれば2週間程度での成約も珍しくありません。
内見が月1件以下の状態が2ヶ月以上続くなら、ADの引き上げまたは家賃・条件の見直しが必要です。変更のタイミングは空室経過1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月の節目で判断するのが実務的です。ADを引き上げても内見が増えない場合は、物件情報(写真・間取り図・テキスト)の品質に問題がある可能性が高いといえます。
AD(入居促進費)の仕組みと相場を詳しく見る入居者募集で選ばれる物件情報の作り方
仲介会社のスタッフが業者間サイトで物件を探す一方、入居希望者自身もSUUMOやHOME'Sで物件を事前確認します。ポータルサイトの物件情報の質は、内見申し込みの転換率に直結します。
写真・間取り図の品質が内見数に直結する根拠
ポータルサイトで物件を比較する際、ユーザーが最初に判断基準にするのは写真です。写真の枚数が少ない・暗い・引越し後の空室が殺風景に見えるだけで、スクロールされてしまいます。スマートフォンでの閲覧が主流になった現在、写真1枚目がサムネイルとして機能するため、第一印象の重要性はさらに高まっています。
アソークでは入居付け用の写真はプロカメラマンが撮影し、掲載枚数の最大化と明るい室内写真の確保を標準対応としています。現管理会社の掲載写真が自撮り・少枚数の場合、写真を撮り直すだけで内見申し込み率が変化する場合があります。
詳細情報の充実度——間取り図に寸法を入れるだけで変わる
ポータルサイトの物件ページに「詳細情報が少ない」と判断された場合、ユーザーは問い合わせをする前に離脱します。問い合わせをするということは、それだけ確認したい不明点があるからです。事前に疑問を解消できる情報が掲載されていれば、問い合わせ・内見申し込みの障壁が下がります。
特に有効なのが間取り図への寸法記載です。冷蔵庫・洗濯機・ベッドが置けるかをオンラインで判断できれば、内見前に「部屋が狭くて家具が入らない」という不安が解消されます。遠方からの引越しを検討している入居希望者にとっては、寸法付きの間取り図が未内見契約の決め手になることもあります。
礼金カット・フリーレントの効果と使いどき
礼金とフリーレントは、初期費用を抑えたい入居希望者に対して直接的に訴求できる条件です。礼金は「払っても何も戻ってこない費用」としてネガティブに認識されているため、礼金1ヶ月→0への変更で問い合わせ数が変化するケースがあります。
フリーレント(入居後1〜2ヶ月の賃料免除)は、初期費用を抑えたい入居希望者への訴求力が高く、仲介会社のスタッフも提案しやすい条件です。ただし、フリーレントを設定すると実質的な家賃収入が下がるため、空室損失の長さと比較して判断してください。空室期間が2ヶ月を超えているなら、フリーレント1ヶ月設定は空室2ヶ月の損失より小さいことが多いです。
その他の集客アイデアについては、以下の記事にまとめています。
募集活動を改善しても決まらない場合は物件改善を検討するアソークの入居者募集・客付け事例
事例①——競合密集エリアの1K物件、募集開始1週間で成約
東京都内の1K物件を自宅から賃貸に転用されたHさん(美容師)の事例です。管理委託前に競合物件の賃料データを調査し、フィルター境界を意識した家賃設定と、プロ作成の図面で募集を開始しました。
競合物件データを活用した賃料設定により、募集開始から一週間くらいで決めて下さった(Hさん・美容師)
募集用の図面もとても美しく作っていただけました(Hさん・美容師)
入居後に洗濯機のトラブルが発生した際も24時間365日対応で業者手配まで完結し、オーナーへの連絡の手間も不要でした。
事例②——約200件の管理物件、稼働率95%→99〜100%に改善
不動産賃貸業を営むEさんは、マンション・事務所ビル・店舗・戸建を含む約200件を管理されています。自主管理時代の稼働率は95%前後でしたが、アソークへの委託後に稼働率が99〜100%まで改善しました。
空いていた残りの部屋が、するすると埋まり、ほどなく満室になった(Eさん・不動産賃貸業)
この改善の背景には、業者間サイトへの情報掲載の徹底・AD設定の最適化・仲介会社への継続的な物件情報提供という、募集活動の基本を抜け漏れなく実行したことがあります。
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よくある質問
Q1. 業者間サイトとポータルサイトの違いは何ですか?
業者間サイト(ATBBやレインズ)は不動産会社しかアクセスできない物件情報プラットフォームです。仲介会社のスタッフがここで物件を探し、顧客に紹介します。ポータルサイト(SUUMOやHOME'S)は入居希望者が直接検索できる一般公開サービスです。成約の約9割は業者間サイト経由のルートを経るため、業者間サイトへの掲載対応が集客の優先事項です。
Q2. ADを設定すると費用はいくらかかりますか?
ADは成約時に仲介会社に支払う費用で、相場は家賃0.5〜2ヶ月分です。成約しなければ支払いは発生しません。競合物件の約79%(200件中158件)がADを設定している現状では、AD未設定のまま募集を継続することは不利な状況に置かれ続けることを意味します。AD設定の詳細は「ADの相場と設定方法」の記事をご確認ください。
Q3. SUUMOやHOME'Sへの掲載は管理会社に依頼すればよいですか?
はい。管理会社がSUUMO・HOME'S・レインズ・ATBBへの掲載を代行します。ただし、全てのポータルサイトに掲載しているかは管理会社によって異なります。掲載状況の確認と、掲載している写真の品質(枚数・明るさ・寸法付き間取り図の有無)を管理会社に確認することが必要です。
Q4. 空室が3ヶ月以上続いています。最初に見直すべきことは何ですか?
優先順位は「①業者間サイトの掲載状況確認→②AD設定・増額の検討→③家賃のフィルター境界確認→④ポータルサイトの写真・情報更新」です。リフォームや設備投資は、この4点を実施しても改善が見られない場合の次のステップです。内見が全く来ない状態は募集活動の問題であり、内見は来るが決まらない状態は物件スペックや条件の問題である可能性が高いといえます。
Q5. 囲い込みをされているか確認する方法はありますか?
管理会社に「業者間サイト(ATBBまたはレインズ)の掲載画面を見せてください」と直接伝えてください。掲載履歴・更新日・掲載内容をすぐに提示できない管理会社は対応に問題がある可能性があります。また、自分でATBBの無料会員登録をして自物件が掲載されているか確認する方法もあります。
Q6. 内見が週に何件来れば順調ですか?
週1件以上の内見がある状態であれば、1ヶ月以内に成約するケースが多いといえます。週3件程度になれば2週間程度での成約も珍しくありません。内見が月1件以下の状態が2ヶ月以上続くなら、ADの引き上げまたは家賃・条件の見直しを検討してください。
Q7. 礼金をゼロにすると収益が減りますか?
礼金収入は一時的なものですが、礼金ゼロで成約率が上がれば空室期間の短縮という収益改善につながります。礼金1ヶ月分(例: 家賃7万円であれば7万円)と空室1ヶ月分の損失(同じく7万円)を比較すると、礼金をゼロにして1ヶ月早く成約できれば収支はイーブンです。それ以上に空室が早く解消されるなら、礼金カットは経済合理的な判断です。
Q8. フリーレントと礼金カットはどちらが効果的ですか?
両者は異なる層に訴求します。礼金カットは「払い損の費用を避けたい」入居希望者全般に響きます。フリーレントは「引越し初月の現金出費を抑えたい」層に響き、仲介スタッフも提案しやすい条件です。エリアの競合状況に応じて選択してください。競合の多くが礼金ゼロなら差別化にはなりませんが、フリーレントは仲介スタッフへの訴求力として独自の効果があります。
Q9. 自分で入居者を見つけることはできますか?
自主管理オーナーであれば、レインズへの直接登録やポータルサイトへの個人掲載も理論上は可能です。ただし、業者間サイトへの掲載権限は原則として不動産会社が持つため、仲介会社に依頼するのが現実的です。自主管理で入居者募集を行う場合の具体的な手順は、以下の記事で解説しています。
Q10. 管理会社を変えずに集客だけ改善できますか?
管理会社を変えずに改善できる点として、①家賃設定の見直し(オーナーが指示できる)、②ADの追加・増額(管理会社に依頼する)、③礼金カット・フリーレントの設定(オーナーが指示できる)があります。これらを管理会社に依頼しても対応が遅い・動いてくれない場合は、管理会社変更を検討すべき段階です。
まとめ
入居者募集で空室を解消するには、入居希望者に直接訴求する前に「仲介業者に紹介される物件になっているか」という視点が必要です。
成約の約9割は業者間サイト経由のルートを経ます。業者間サイトへの掲載・ADの設定・ポータルサイトの物件情報の品質という募集活動の基本を徹底することが、空室解消への最短経路です。
募集活動を見直しても改善が見られない場合、物件スペック(設備・条件・リフォーム)の改善が次のステップになります。その観点の情報は別記事でまとめています。
アソークでは入居率98.5%を維持し、SUUMO・HOME'S・レインズ・ATBBへの掲載、プロカメラマンによる撮影、24時間365日対応を標準サービスとして提供しています。入居付けに不安があるオーナーは、現状の募集活動について無料で相談できます。
